調査報告について / REPORT

2019 年11月実施「タオル流通動向調査」の結果に関するリリース

 アンケート対象のタオル流通会員企業の今調査での景気動向への見方を示す「業況判断DI」は -0.85と、8月調査(-0.66)に比べて大幅に悪化。この水準は、調査開始以来の既往最低レベル(2018年2月調査)と同等となっており、消費税率引き上げ等による消費停滞の影響を反映した結果となっている。
 また、先行きに関しても、三ヶ月先の「業況判断DI」は -0.69と、8月調査の -0.58に比べて足許同様に後退感が強まり、水準は依然大幅なマイナス圏内の動きにとどまるなど、引き続き厳しい状態が持続すると考えている先が大勢となっている。
 販売動向に関しては、「良い」と答える先はなく、「やや良い」が全体の8%となるものの、「やや悪い」「悪い」と答える先が全体の54%にのぼるなど、厳しい販売地合いが続いているとの判断が多数を占めている。
 この間、前月に比べて仕入価格の上下を問う質問では、前回8月調査では、「上昇した」と判断する先は全体の8%の先にとどまっていたが、今回調査では23%の先が「上昇した」と判断している。主な理由としては、製造工程でのコストアップを反映する形で国内製の付加価値の高い商品での値上げが顕在化していることが挙げられると思われる。一方で、配送コスト、副資材品コストなどのアップに関しては「深刻になってきている」との指摘も多く聞かれるところである。
 一方で、販売価格に関しては、今回調査では92%の先で「変化なし」を選ぶなど、販売価格への仕入価格の上昇分転嫁の動きは一服しており、「以前に比べて利ざやが薄くなっている」と感じる先が増えている印象である。
 この間、在庫水準に関しては、「過剰」と答えた先が半数以上にのぼるなど、全体としては、流通段階のだぶつき感は、依然として高水準にあると考えられる。


Q. 業況判断に関する質問
 今回調査の業況判断は -0.85 と前回8月調査(-0.66)比大幅に悪化し、既往ボトムである2018年2月調査(-0.85)に再び並ぶ厳しい判断となった。既往ボトム以降は、1年9ヶ月に亘り厳しい水準ではあるものの、概ね -0.6 ~ -0.7のレンジで推移していたが、今回は久しぶりに明確に低下したと言える。

*業況判断DIは、「良い」2、「やや良い」1、「どちともいえない」0、「やや悪い」-1、「悪い」-2を付与して、総合計をアンケート参加者数で除して、一会員の平均を算出したもの。

 今回の厳しい判断の主な理由として指摘されているのは、10月に導入された消費税の引き上げに関する点である。2度の台風禍における千葉や長野、東北などの被災が持続していることに加え、「10月1日消費税率引き上げ後、一人あたりの購入点数が減った」「9月は駆け込み需要を感じていたが、10月入り後めっきりものが動かない」など足許は厳しい消費動向が続いているとの認識で一致している。
 また、秋口の最低賃金引き上げに伴い、パートを中心に人件費上昇が続き、運賃などの物流コストも前年同期に比べ上昇していることなどから、「売上が減少しているのに、コストはあがる方向で大変厳しい」などの声も聞かれるところであり、多くの先で業況判断を下振れさせる一因となっていると思われる。

個人消費を反映する百貨店売上、チェーンストア売上高の足許の推移を見ても、9月は増税前の駆け込み需要で好調であったが10月入り後はその反動から売上不芳となっており、均してみると、それぞれ販売総額は既存店で前年を下回るかたちが持続するなど全体として不芳な状況が持続している。タオルの属するカテゴリーの売上は、チェーンストア向けでは昨対近辺またはプラスの動きとなっているものの、百貨店向けでは高級な商材の店頭売上が芳しく無く、長きに亘り前年を大きく下回るトレンドが持続している。
11月以降の状況についても、「消費税率引上げの増税感は導入後半年以上続くだろう」として、しばらく消費戦線は回復しないだろう、との見方が主流となってきている印象。

全国百貨店、チェーンストアにおけるタオル分野の売上高伸び率推移

前年同期比伸び率%、店舗数調整後 5月 6月 7月 8月 9月 10月
全国百貨店売上高合計 -0.8 -0.9 -2.9 2.3 23.1 -17.5
「その他家庭用品」分野 -8.3 -6.4 -6.0 -0.2 21.3 -21.1
全国チェーンストア売上高合計 -0.7 -0.5 -7.1 -0.3 2.8 -4.1
「住関品 日用雑貨品」分野 0.3 -0.6 -1.8 1.2 -9.6 -8.5
「住関品 家具インテリア」分野 1.1 1.6 -8.9 1.0 19.1 -4.0

(注)百貨店売上高は日本百貨店協会発表、チェーンストア売上高は日本チェーンストア協会発表資料による

 一方で、3か月先の業況に関する判断DIについては、先行きの判断も足許と同じく-0.69 と、依然として低迷を予想している先が多い。数値的には、前回8月調査での-0.58に比べても、大きく悪化した判断となっており、先行きに関しても慎重な見方をする先が多く、全体の水準的には、引き続き大幅なマイナス圏での動きが持続する結果となっている。

業況判断DI


Q.販売、仕入動向に関する質問
 前回8月調査では「夏休み入り後の気温の急上昇で夏物関係商品が順調に動いた」との声も聞かれ、「良い」、「やや良い」と判断する先も17%と前々回5月調査に比べて、改善される動きがみられていたが、今回調査では、「消費増税後の荷動きが極端に悪い」「インバウンドの需要がなくなった今、日本人客だけでは購買数が減っている」などの声が聞かれる中、「良い」、「やや良い」と判断する先の比率も8%に低下してきている。一方で、「悪い」、「やや悪い」と判断する先は54%と、前回調査(58%)に比べてやや改善していることから見ると、販売動向は芳しくないが、大きく落ち込んでいるという印象ではなく、相変わらずの不芳な水準で推移している、と判断することができる。

 前月との比較で仕入価格の変化を問う質問では、今回調査では「上昇した」と判断する先は23%となっており、前回8月調査(8%)時点では、沈静化しつつあった仕入単価の引き上げの動きは年末の国内の付加価値の高いもの中心に再燃している兆しが見える状況。
 一般に、タオルの製造工程での原価上昇の動きは、昨年度以降国内製品の仕入単価上昇という形で現れていたが、付加価値の高い商品群は、その時点では、値上がりに至らなかったものも多数みられていた。しかし、今年度に入ってのプリント賃などの加工費の値上がり、運賃等の値上がり、人件費アップなどを背景に、付加価値の高い商品群でも、遅ればせながら値上げの動きが顕在化しており、そうしたものを中心に仕入れコストが上がったと考える先が増加していると考えられる。
 一方で、「大きな荷物の荷運びを拒否され荷物の口数が増加するので、結局運賃コストが上昇」「景気の好循環のせいかコンテナドレエ代が上がってきている」「副資材コストの上昇はじわじわと効いてきている」などの指摘も多く、周辺コストの上昇も引き続き持続しているので、今後の仕入交渉も「予断を許す状況ではない」と考える先が多くみられる。

 前月との比較で販売価格の変化を問う質問では、2月調査では36%の先が選んでいた「下降した」との判断について、5月調査、前回8月調査、今回調査では一先もなくなっているなど、販売価格は安定している状況にあると思われる。
 その一方で、「上昇した」と答える先は8%にとどまっており、このところ連続して上昇してきていた仕入価格のアップを得意先に転嫁していく動きについては、なかなか進展せず、一段落してしまった様子が窺われるところである。

Q.在庫動向に関する質問
 在庫水準に関しては、今回調査においても「不足」と答えた企業はなく、「適正」と答えた企業が全体の 38% 、「過剰」と答えた先が 62%を占めるなど、荷動きに停滞感を持つ企業が依然として多い傾向が持続している。 前回調査に比べると、「過剰」と答えた先の割合は少し増加(前回調査では58%)しているおり、業界全体としては、流通段階でのだぶつき感は依然として強く、荷あまり状態は持続していると思われる。
以上

なお、本調査に関するご質問等がありましたら、お気軽に以下にご連絡ください。
info@osakatowel.jp

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