調査報告について / REPORT

2020 年11月実施「タオル流通動向調査」の結果に関するリリース

 アンケート対象のタオル流通会員企業の今調査での景気動向への見方を示す「業況判断DI」は -1.17 と、非常事態宣言発表を受けた外出自粛、小売店舗閉鎖などの影響から消費経済が大幅に悪化していた5月調査(-1.67)、前回8月調査(-1.31)に比べ改善をみたものの、依然として非常に厳しい水準にとどまっている。また、先行きに関しても、三ヶ月先の「業況判断DI」は -0.91と、当面厳しい状態が持続すると考えている先が大勢となっている。
 また販売動向に関しては、「やや悪い」「悪い」と答える先が全体の75%にのぼるなど、「販売状態は依然として厳しい水準である」との判断が多くを占めている。
 また、前月に比べて仕入価格、販売価格の上下を問う質問では、足許原料綿花価格の高騰、元高などを反映して、一部の先で仕入価格が「上昇した」と判断しているほか、販売価格も25%の先で「上昇した」と答えているが、大半の先では「変化なし」「下落した」としており、大勢としては前回調査に比べて大きな変化はないと判断される。

この間、在庫水準の評価は依然「過剰」との声が多く、流通在庫過多の状況には変化がないものと思われる


Q. 業況判断に関する質問
 今回調査の業況判断は -1.17 と、調査開始以来の既往ボトムである5月調査(-1.67)、前回8月調査(-1.31)に比べて改善がみられたものの、依然非常に厳しい水準にとどまっている。コロナ禍が顕在化した2月調査で大きく悪化(-1.29)したが、全国的に緊急事態宣言が宣言されていた5月調査では、そのレベルに比べて更に悪化していた。その後コロナ禍も徐々に後退、百貨店売上なども戻ってきつつあった状況を反映し、8月、11月と業況判断は徐々に改善傾向がみられている。
 長いトレンドで見ると、2018年2月に従来の既往ボトム(-0.85)をつけて以降は、1年9ヶ月に亘り厳しい水準ではあるものの、概ね -0.6 ~ -0.7のレンジで推移していた。しかし、消費税率引き上げ後初となった昨年11月調査時に悪化、その後コロナウイルス禍の拡がりを背景に5月調査で既往ボトムを大幅に更新、大きく水準訂正を余儀なくされ、現在の水準にまで落ち込んでいる流れとなっている。

*業況判断DIは、「良い」2、「やや良い」1、「どちともいえない」0、「やや悪い」-1、「悪い」-2を付与して、総合計をアンケート参加者数で除して、一会員の平均を算出したもの。

 今回判断水準が引き続き非常に厳しい理由は、直接的には、1月後半以降中国で発生した新型コロナウイルス禍の世界的な拡がりが持続していることや、小売店等での売上高などの個人消費の落ち込みが短期間に改善されないことが原因となっていることは間違いない。さらに去年まで景気を牽引してきていたインバウンド需要が、コロナ禍の蔓延による国境封鎖の影響からほぼゼロの水準まで落ち切っており、これが宝飾品などの百貨店での高額品の販売に急ブレーキをかけている。
 一方で、個人消費の動向をみると、百貨店などの店舗が閉鎖された、あるいは大幅時短営業をしていた4~5月に比べると、各分野で回復している傾向がみられ、これに伴い各社の判断も全体として上向いている。販売動向が「悪い」と判断する先は、5月調査の73%に比べると8月調査(54%)、今回11月調査(50%)となるなど、低水準ながら改善がみられているところである。
 コロナ禍発生の前後で売れ筋商品も大きく変化してきており、マスクなどのウイルス対策医療品の需要急拡大、またいわゆる「巣ごもり需要」による近隣スーパーやホームセンターの販売好調などもみられ、百貨店売上は悪いもののチェーンストア売上は堅調な流れとなっている。タオルに関しても、衛生意識の向上から日用雑貨分野では販売が好調な様子も垣間見られているのが足許の現状である。

 この間、個人消費を反映する百貨店売上、チェーンストア売上高の足許の推移をみると、全国百貨店売上は、4月の臨時閉店の影響等から前年比70%ダウンを超える低水準となるなど消費は大きくブレーキがかかることとなったが、5月以降月を追うごとに改善してきていた。
 昨年10月1日には消費税率が2%上がったために、9月には駆け込み需要、10月はその反動が出ており、前年比を取り上げてみると、9月は再び大幅前年割れ、10月には急回復している結果になっている。確かに消費トレンドは回復途上にあり、百貨店売上も11月には前年比15%ダウン程度の水準まで戻ってきている。
 しかし、足許我が国でも、11月後半よりコロナ禍の「第3波」が発生しており、12月入り後は街への入込客も大幅に減じているほか、「GOTO」キャンペーンも12月中旬以降は一時中止になるなど、再び消費産業全体は試練の時を迎えており、今後の見通しは全く予断を許さない状況となってきている。

全国百貨店、チェーンストアにおけるタオル分野の売上高伸び率推移

前年同期比伸び率%、店舗数調整後 4月 5月 6月 7月 8月 9月 10月 11月
全国百貨店売上高合計 -72.8 -65.6 -19.1 -20.3 -22.0 -33.6 -1.7 -14.3
「その他家庭用品」分野 -68.0 -59.8 -13.3 -15.0 -11.5 -24.1 10.8 -8.8
全国チェーンストア売上高合計 -4.5 1.1 3.4 2.6 3.3 -4.6 2.8 1.2
「住関品 日用雑貨品」分野 -0.2 1.0 3.2 2.8 2.5 -11.2 3.8 3.8
「住関品 家具インテリア」分野 -24.9 -4.9 22.3 14.4 7.9 14.4 4.4 4.3

(注)百貨店売上高は日本百貨店協会発表、チェーンストア売上高は日本チェーンストア協会発表資料による

 一方で、3か月先の業況に関する判断DIについては、今般の不透明感の主因であるコロナウイルス禍の消費への影響も「新規感染者数も減ってきてさすがに徐々に解決するだろう」と見方などから-0.91と、8月調査(-1.23)に比べやや改善してきているものの、「足許秋冬商戦は全く盛り上がりを欠いている」「法人の名入れ需要が芳しくない上、イヴェント需要は大きく落ち込んでいる」などと悲観的な見方の先も多いうえ、「長引く混乱で今後信用不安が増すのではないか」と取引先の倒産などを心配する向きもでてきており、景気の先行きに対する判断も引き続き極めて厳しい水準にとどまっている。

業況判断DI


Q.販売、仕入動向に関する質問
 販売動向に関する状況をみると、今回11月調査では、「悪い」と判断する先が50%、加えて「やや悪い」と判断する先25%を入れると、全体の75%の先が悪い方向に判断しているが、これは前回8月調査(92%)と比べて大きく改善しており、依然厳しい状況であるとはいえ販売状況は徐々に改善していると判断される。消費全体としては厳しいものの、チェーンストア売上など一部では好調な状況もみられることが、こうした判断の背景にあるものと思われる。

 この辺の事情をやや詳しく見ると、2月後半以降、中国ほかからのコロナウイルス罹患者の入国を妨げる措置が取られ、国境を事実上閉鎖していることから外国人の入国が極端に減少、インバウンド需要は皆絶に近い状態になっており、先行きの改善見通しも立たない状況。また、全国的に非常事態宣言は解除されたものの、引き続き移動の自粛が叫ばれる中、入り込み客数の減少もさることながら、営業時間の短縮は引き続き継続しており、百貨店などの小売売上金額の前年対比減少幅縮小のピッチも遅れ気味になっている展開。「巣ごもり需要」は高まり、ECによる消費も大きく進展したものの、消費全体から見ればその比率はまだまだ低く、販売状況全体の向上に寄与するレベルにはなっていないと思われる。
 こうした状況下、マスク、除菌液などの衛生商品は爆発的な売行きを示すなど、ドラッグストアやホームセンターなどでは活況を呈する売り場も散見されるほか、外食の減少を背景にスーパーでの食料品需要も堅調な動きを見せている。そうした中にあって、「自宅待機」者の増加、「手洗い」の奨励などを背景に実用向けのタオルの販売は相対的に堅調となっており、「多くのアイテムの中ではタオルは比較的恵まれたアイテムである」との意見もきかれるところでもある。

 前月との比較で仕入価格の変化を問う質問では、8%の先で「下降した」、75%の先では「変化なし」と回答しているものの、17%の先では「上昇した」と判断している。これは、足許原料綿花の国際価格が上昇基調を続けていることや、輸入においては、元ドル相場において元高が急ピッチで進んでいることなどが原因と考えられる。
 また、販売価格の変化を問う質問では、25%の先で「上昇した」と回答しているなど、仕入、販売においては、一部では単価の改定もみられている。

Q.在庫動向に関する質問
 在庫水準に関しては、コロナ禍の影響から小売店での販売が滞っているほか、オリンピックに合わせて開業予定であったホテルの開業延期の影響、イヴェント自粛の影響などから、売上の減少とともに商品の回転率が下がってきており、その結果として在庫が過剰になりがちな情勢。
 今回11月調査では、在庫が「過剰」と判断する先は全体の67%にのぼり、前回8月調査(46%)に比べ大幅悪化、在庫過多の状況が持続していると思われる。
以上

なお、本調査に関するご質問等がありましたら、お気軽に以下にご連絡ください。
info@osakatowel.jp

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