調査報告について / REPORT

2021 年5月実施「タオル流通動向調査」の結果に関するリリース

 2月から3月初めにかけて緊急事態宣言が解除されたあとも、変異株の流行による感染者数増、重篤患者数増などを受けて一部地域では医療逼迫が進んだことから、4月末以降再度緊急事態宣言が出される状況になるに及び、消費動向は一段と低水準の推移となり、アンケート対象のタオル流通会員企業の今調査での景気動向への見方を示す「業況判断DI」は足許 -1.26 と、前回2月調査( -1.31 )に引き続き非常に厳しい水準となっている。
 一方、三ヶ月先の「業況判断DI」は -1.00 と、コロナ禍の解決も見通せない中オリンピック開催による景気浮揚効果への期待感が後退していることを背景に、前回調査、前々回調査に比べて悪化する結果となった。
 こうした環境の中、販売動向に関しては、「やや悪い」「悪い」と答える先が全体の 80%にのぼるなど、「販売状態は依然として厳しい水準である」との判断が多くを占めている。
 また、前月に比べて仕入価格の上下を問う質問では、大半の先では「変化なし」、また一部の先で「下落した」としており、大勢としては前回調査時点に比べて大きな変化はなく、値上がり局面にないと判断されるものの、足許原料綿花価格の高騰、円安などコストが上がる材料もあり、先行きについては予断を許さない状況となっている。
 前月に比べて販売価格の上下を問う質問では、 20% の先で「上昇した」と回答しているものの、8割方の先では「変化なし」「下落した」とするなど、強弱相まっている結果となっている。
 この間、在庫水準の評価は依然「過剰」との声が多く、全体としては、流通在庫過多の状況には変化がないものと思われが、コロナ禍が長引く中、各企業の効率経営も進んでいることなどから、前回、前々回に比べると「過剰」と回答する先が減少している。


Q. 業況判断に関する質問
 今回調査の業況判断は -1.26 との結果。春先のコロナ禍における緊急事態宣言下にあって調査開始以来の既往ボトムをつけた5月調査( -1.67 )以降、8月( -1.31 )、11月調査( -1.17 )、2月調査( -1.31 )に引き続き、低位横ばい圏内の動きとなっている。足許2月後半から3月初めにかけて、年初に出されていた2回目の緊急事態宣言が解除される中、街に人手が戻り消費は徐々に改善傾向にあったものの、変異ウイルスの感染増加で新規患者数が再度急速に増えており、ゴールデンウィーク前に3回目の緊急事態宣言が発令されることとなってしまった。一部地域では医療逼迫も深刻で、コロナ禍に出口が見えない中、消費マインドは、生活防衛意識の高まりから低調な推移をたどっているのが実情である。今回調査の判断では、全体の87 %、9割近い先で「悪い」「やや悪い」とネガティブな判断をしており、状況の深刻さが浮き彫りになっていることも特徴。

*業況判断DIは、「良い」2、「やや良い」1、「どちともいえない」0、「やや悪い」-1、「悪い」-2を付与して、総合計をアンケート参加者数で除して、一会員の平均を算出したもの。

 この間、個人消費を反映する全国百貨店売上の足許の推移をみると、百貨店売上高は足許3月、4月は、昨年第一回目の緊急事態宣言下、時短営業または臨時休業を余儀なくされ大きく売上高が下がったことの裏が出て前年比で大きく伸ばすことになったが、水準は平時である一昨年に比べて3割程度低い水準に留まっており、以前極めて厳しい情勢が続いている。
 一方で、チェーンストア売上高は、巣ごもり需要を反映して、食料品を中心に堅調な販売地合いを続けており、住居関連商品である日用雑貨品や家具、インテリア商品も前年同期を上回る販売結果を示している。
 しかし総じては、都市部で緊急事態宣言が出る中、小規模の小売店は時短営業を余儀なくされる中で販売不振にあえいでおり、個人消費全体をみると、爬行性はあるとはいうものの、概ね厳しい販売地合いが続いているといえる。また、関西圏のコロナ患者急増を受け、GW前より首都圏、大阪圏などで3度目の緊急事態宣言が発令され、発令地域では土日の百貨店、大型店休業が始まったため、各方面の消費動向は大きくブレーキがかかる状況となっている。

全国百貨店、チェーンストアにおけるタオル分野の売上高伸び率推移

前年同期比伸び率%、店舗数調整後 9月 10月 11月 12月 1月 2月 3月 4月
全国百貨店売上高合計 -33.6 -1.7 -14.3 -15.9 -29.7 -10.7 21.8 167.0
「その他家庭用品」分野 -24.1 10.8 -8.8 -8.9 -20.5 1.5 26.6 135.5
全国チェーンストア売上高合計 -4.6 2.8 1.2 2.7 1.2 -2.1 1.3 6.0
「住関品 日用雑貨品」分野 -11.2 3.8 3.8 2.2 0.3 -7.7 0.2 12.3
「住関品 家具インテリア」分野 14.4 4.4 4.3 10.5 -4.9 6.1 3.2 3.6

(注)百貨店売上高は日本百貨店協会発表、チェーンストア売上高は日本チェーンストア協会発表資料による

コロナ蔓延下での大型小売店での販売動向をやや詳しく見ると、大型量販店、食品スーパー、ホームセンターなどが中心のチェーンストア売上高は、1年間を通してみれば前年水準を上回っており、「巣ごもり需要」を背景に堅調な売れ行きとなっている。一方で、百貨店売上は、店舗の休業、時短営業、不要不急の購買行動の抑制などから、前年比で見ると月による爬行性はあるもののベースとして大きく売上高を落としている。4月度だけの比較で見ると、今年は昨年4月の緊急事態宣言下の状態に比べると167%の伸びを示しているものの、一昨年4月の平時に比べると、3割近く売上高を落としているなど、消費の回復には全く至っていないといえる。

▽ 全国百貨店、チェーンストア売上高対前年同月比推移(%)
コロナ下の売上高の推移

また4月度の売上に関して、この5年間を比較してみると、チェーンストアはほぼ横ばいであるのに対し、百貨店売上は大きく売上を落とす状況となっており、消費のあり方が変化している兆しが窺えるところである。

▽ 全国百貨店、チェーンストア4月度単月売上高の5年比較(単位 億円)
大型小売店売上の5年比較

(注)全国百貨店売上高は各地百貨店74社約180店舗の合計 チェーンストア売上高は大型量販店、食品スーパーを中心とした大手56社約10,600店舗の合計

 一方で、3か月先の業況に関する判断DIについては、前回2月調査時点では、今般の不透明感の主因であるコロナウイルス禍の消費への影響も「夏ごろに向かっては新規感染者数も減ってきて、さすがに徐々に改善されていくだろう」「オリンピック聖火リレーが始まるなど全国的にはお祭りムードもでてくるとおもわれる」との見方などから -0.67 と足許の判断( -1.31 )に比べ高い水準にあるなど、先行きに関しては徐々に明るい兆しがみえると判断する先が多かった。
 しかし、その後、三度目の緊急事態宣言が発令されたことや、医療逼迫の中、オリンピック開催も観客の抑制、また都内街中のパブリックヴューイングも中止される見込みなど、オリンピックの景気発揚効果も限定的にならざるをえない、との判断が主流となる中、「良い」「やや良い」を見込む先はなくなり、2/3程度の先が「悪い」「やや悪い」と判断する結果となっている。
 結果、3か月先の業況に関する判断DIは -1.00 と、足許の判断よりやや改善するものの非常に厳しい判断水準となっている。

業況判断DI


Q.販売、仕入動向に関する質問
 販売動向に関する状況をみると、前回11月調査では、「悪い」と判断する先が50%、加えて「やや悪い」と判断する先25%を入れると、全体の75%の先が悪い方向に判断していたが、今回2月調査では、85%の先で「悪い」「やや悪い」と悪い方向に判断しており、販売状況は徐々に悪化しているという印象である。チェーンストア売上など一部では好調な状況もみられるものの、特に百貨店売上の落ち込みも激しく、消費全体としては極めて厳しい水準にあると判断されている。

 販売動向に関する状況をみると、「悪い」と判断する先が 47% 、加えて「やや悪い」と判断する先 33% を入れると、全体の 80% の先が悪い方向に判断しており、販売状況は徐々に悪化しているという印象である。チェーンストア売上など一部では好調な状況もみられるものの、特に百貨店売上の落ち込みは激しく、消費全体としては極めて厳しい水準にあると判断されている。
 3月初旬の2回目の緊急事態宣言解除後、各分野で通常営業が行われ、百貨店売上高でみても前年同月比で大きく持ち直したものの、一昨年の平時に比べると大きく割れた水準で推移するなど、消費者の生活防衛意識の高まりを背景に、販売動向は低調に推移している。
 こうした中、ゴールデンウィーク前後から、変異株ウイルスの蔓延による新規感染者数増と重篤な患者数の急増がみられ、関西地方をはじめとして医療崩壊が現実のものとなってきた。4月末から5月初めにかけて、所謂「第四波」に対応するため、首都圏、関西圏、中部圏で3度目の緊急事態宣言が発令され、百貨店、大型小売店の土日休業や営業時間の縮小、イベント等の観客数の制限、飲食店での酒類提供の禁止などが行われ、一気に消費マインドを冷やす結果となっている。

 前月との比較で仕入価格の変化を問う質問では、7% の先で「上昇した」としているものの、13% の先で「下降した」と判断しているほか80% の先で「変化なし」と回答しており、現状仕入価格は上昇していない模様。しかし、足許原料綿花の国際価格が非常に高い水準で推移しているほか、為替相場において円安が進むなど輸入商品が値上がりする兆しを見せていることが不安材料として散見される。
 また、販売価格の変化を問う質問においては、20% の先で「上昇した」と回答しているものの、27 % の先で「下落した」と回答、53% の先では「変化なし」としている。販売価格においては、一部では上昇傾向がみられるものの、全体的には、需要低迷を背景に、強弱相まって、全体としては強含み状況にはなっていないと思われる。

Q.在庫動向に関する質問
 コロナ禍の消費への悪影響の期間が1年以上にも及び、各社コロナ「蔓延下での会社経営のあり方」を追求されている状況であるが、徐々に売上に対して仕入を落として在庫回転を上げていこうという流れが顕在化している印象である。今回5月調査では、在庫が「過剰」と判断する先は全体の53% と、前回2月調査( 62% )、前々回11月調査( 67% )に比べると過剰感が徐々に後退してきている。
 とはいうものの、半数以上の先で「過剰」としている状況には変わりがなく、全体としては、在庫過多の状況が持続していると思われる。
以上

なお、本調査に関するご質問等がありましたら、お気軽に以下にご連絡ください。
info@osakatowel.jp

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