調査報告について / REPORT

2020年2月実施「タオル流通動向調査」の結果に関するリリース

 アンケート対象のタオル流通会員企業の今調査での景気動向への見方を示す「業況判断DI」は、消費税率引き上げ等による消費停滞や中国で発生した新型コロナウイルス禍の影響などから -1.28と、調査開始以来の既往最低レベル(2018年2月調査)と同等と水準になった前回11月調査(-0.85)に比べても大幅に悪化した結果となっている。
 また、先行きに関しても、三ヶ月先の「業況判断DI」は -1.00と、11月調査の -0.69 に比べて足許同様に後退感が強まり、水準は依然大幅なマイナス圏内の動きにとどまるなど、厳しい状態が持続すると考えている先が大勢となっている。
 販売動向に関しては、「良い」、「やや良い」と判断する先が全くなくなり、「やや悪い」「悪い」と答える先が全体の78%にのぼるなど、厳しい販売地合いが続いているとの判断が殆どを占めている。
 この間、前月に比べて仕入価格の上下を問う質問では、前回11月調査では付加価値の高い商品などでの値上げがあり「上昇した」と判断する先は全体の23%存在していたが、今回調査では14%の先が「上昇した」と判断するにとどまるなど、仕入単価の上昇圧力は一巡感から後退していると判断することができる。
 一方で、販売価格に関しては、販売状況の不芳と先行き不透明感の増加などから14%の先で「下落した」と判断しているものの、79%の先で「変化なし」を選ぶなど、販売価格への仕入価格の上昇分転嫁の動きは一服しており、「以前に比べて利ざやが薄くなっている」と感じる先が増えているものの、販売価格は引き続き安定圏の範囲内で推移していると思われる。
 この間、在庫水準に関しては、新型コロナウイルス禍の影響で中国での生産品の入荷遅れが顕在化、一部商品で品薄になっている影響で、「不足」「適正」と判断する先が全体の64%に上っているなど、在庫回転は前回調査時点に比べて大きく改善したといえる。


Q. 業況判断に関する質問
 今回調査の業況判断は -1.28 と、調査開始以来の既往ボトムである2018年2月調査(-0.85)に並ぶ厳しい判断となった前回11月調査(-0.85)比大幅に悪化した。既往ボトム以降は、1年9ヶ月に亘り厳しい水準ではあるものの、概ね -0.6 ~ -0.7のレンジで推移していたが、消費税税率引き上げ後初となった前回調査に悪化、今回は更に大きく悪化する結果となった。

*業況判断DIは、「良い」2、「やや良い」1、「どちともいえない」0、「やや悪い」-1、「悪い」-2を付与して、総合計をアンケート参加者数で除して、一会員の平均を算出したもの。

 今回大きく判断が悪化した理由は、1月後半以降中国で発生した新型コロナウイルス禍の世界的な拡がり懸念が大きな要素を占めている。1月末の旧暦正月前後の中国での拡がりが、生産面での中国からの輸入の滞りを予想させ、それに伴うサプライチェーン寸断に対する懸念から先行き不透明感を持つ先が増えていたが、その後、2月後半には、ウイルスは韓国、日本に伝搬する動きを見せる中で、日本での各種イベント中止懸念、インバウンド需要の急激な衰退予想等から景気不透明感が急速に高まり、経営マインドは大幅に悪化した。
 また、前回調査において、厳しい判断をされた主な理由として指摘されていた、10月に導入された消費税の引き上げに関する点も個人消費には大変大きな不安定要素として持続しているとともに、秋口の最低賃金引き上げに伴い、パートを中心に人件費上昇が続き、運賃などの物流コストも前年同期に比べ上昇していることなどから、「売上が減少しているのに、コストはあがる方向で大変厳しい」などの声も引き続き聞かれるところであり、多くの先で業況判断を下振れさせる根底的な原因となっていると思われる。

 個人消費を反映する百貨店売上、チェーンストア売上高の足許の推移を見ても、9月は増税前の駆け込み需要で好調であったが10月入り後はその反動から売上不芳となっており、均してみると、それぞれ販売総額は既存店で前年を下回るかたちが持続するなど全体として不芳な状況が持続している。タオルの属するカテゴリーの売上は、チェーンストア向けでは昨対近辺の動きとなっているものの、百貨店向けでは高級な商材の店頭売上が芳しく無く、長きに亘り前年を大きく下回るトレンドが持続している。
 2月以降の状況については、コロナウイルス禍からインバウンド需要が激減しており、一部衛生商品が逼迫するなど部分的な需要はみられるものの、百貨店売上は大きく昨年度水準を下回っている。チェーンストアでは、外出自粛の動きもあるため、食料品等生活必需品の購買は底堅く推移しているものの、入り込み客数の減少から、こちらも厳しい状態が持続しているなど、個人消費は急ブレーキがかかっており、今後の卸売段階への影響が懸念されるところである。

全国百貨店、チェーンストアにおけるタオル分野の売上高伸び率推移

前年同期比伸び率%、店舗数調整後 8月 9月 10月 11月 12月 20/1月
全国百貨店売上高合計 2.3 23.1 -17.5 -6.0 -5.0 -3.1
「その他家庭用品」分野 -0.2 21.3< -21.1 -10.0 -7.8 -8.0
全国チェーンストア売上高合計 -0.3 2.8 -4.1 -1.4 3.3 -2.0
「住関品 日用雑貨品」分野 1.2 -9.6 -7.5 -3.1 -4.3 -0.6
「住関品 家具インテリア」分野 1.0 19.1 -4.0 -2.2 -13.5 -12.8

(注)百貨店売上高は日本百貨店協会発表、チェーンストア売上高は日本チェーンストア協会発表資料による

 一方で、3か月先の業況に関する判断DIについては、今般の不透明感の主因であるコロナウイルス禍の消費への影響も「さすがに数ヶ月単位では解決するだろう」と見方をする先もあり、先行きの判断は-1.00 と、足許の判断に比べると改善方向の結果となっている。しかし、水準自体は、前回11月調査での-0.69に比べると大きく悪化しており、景気の先行きに対する判断は極めて厳しくなってきているということは間違いない。

業況判断DI


Q.販売、仕入動向に関する質問
 前回11月調査では、「消費増税後の荷動きが極端に悪い」などの声が聞かれる中ではあったが、「良い」、「やや良い」と判断する先の比率も8%みられたが、今回2月調査では、「コロナウイルス禍の拡がりから、中国人を中心に外国人の入込が極端に減ってしまい、インバウンド需要が激減している」など悪材料が加わり、「良い」「やや良い」と判断する先は全くなくなった。一方で、「悪い」、「やや悪い」と判断する先は78%に上り、前回調査(54%)に比べて大きく悪化している。また、「悪い」と判断する先は全体の43%にまで上っている。

 前月との比較で仕入価格の変化を問う質問では、今回調査では「上昇した」と判断する先は14%となっており、前回11月調査(23%)に比べるとやや沈静化しつつあるということができる。前回調査時点では、プリント賃などの加工費の値上がり、運賃等の値上がり、人件費アップなどを背景に、「付加価値の高い商品群で遅ればせながら値上げの動きが顕在化している」との声も聞かれていたが、全体的に販売状況が悪化していることを受けて、仕入れ単価の引き上げ圧力は足許弱まってきていると思われる。また、前回調査時では「下降した」と見る先はなかったが、今回調査では7%の先が「下降した」と判断している。

 前月との比較で販売価格の変化を問う質問では、36%の先が「下降した」との判断していた前年2月調査以降、5月調査、8月調査、前回11月調査とも、「下降した」と判断する先は一先もない状態が続いており、販売価格は1年ほど安定している状況が持続していたが、今回調査では14%の先が「下落した」と判断しており、販売動向の不芳とともに販売価格を引き下げざるを得ない先も現れてきていると思われる。
 その一方、「上昇した」と答える先は7%にとどまっており、仕入価格のアップを得意先に転嫁していく動きについては、なかなか進展せず、一段落してしまった様子が窺われるところである。

Q.在庫動向に関する質問
 在庫水準に関しては、コロナウイルス禍の影響から中国からの入荷が大幅に遅れている状況下、「一部定番の在庫が払底して欠品が起こってしまった」など、部分的ではあるものの在庫回転が改善した先が散見している。今回調査においては、7%の先が「不足」と答えており、また「適正」と答えた企業が全体の 57% と、前回11月調査(38%)に比べて大幅に改善しているということができる。「過剰」と答えた先についても、36%にとどまり、前回11月調査 (62%)に比べて大幅に減少した。
 全体としては、荷動きに停滞感を持つ企業が依然として多い傾向が持続していることは間違いないが、このところの中国からの入荷遅れの顕在化が在庫回転率の向上にプラス寄与していることも今回調査の特徴であるといえるだろう。
以上

なお、本調査に関するご質問等がありましたら、お気軽に以下にご連絡ください。
info@osakatowel.jp

気持ちよくタオルをお使いいただく為に

ページトップへ