調査報告について / REPORT

2020年5月実施「タオル流通動向調査」の結果に関するリリース

 アンケート対象のタオル流通会員企業の今調査での景気動向への見方を示す「業況判断DI」は、新型コロナウイルス禍の世界的な拡がりから、我が国においても、非常事態宣言発表を受けた外出自粛、小売店舗閉鎖などの影響から消費経済が大幅に悪化しており、この動きを反映してDIは-1.67と、前回2月調査(-1.28)で記録した調査開始以来の既往最低レベルをさらに大幅に下回る結果となった。
 また、先行きに関しても、三ヶ月先の「業況判断DI」は -1.27と、2月調査の -1.00に比べて足許同様に後退感が強まり、当面厳しい状態が持続すると考えている先が大勢となっている。
 販売動向に関しては、「やや悪い」「悪い」と答える先が全体の93%にのぼるなど、「販売状態は悪化している」との判断が殆どを占めている。
 また、前月に比べて仕入価格、販売価格の上下を問う質問では、このところ、顧客店舗の閉鎖、外出自粛が続く中、顧客との商談の機会も激減している状況を反映して、殆どの先では、いずれも「変化なし」と回答している。
 この間、在庫水準に関しては、3月後半以降新型コロナウイルス禍の影響で中国などでの生産品の入荷遅れは解消したが、我が国内での非常事態宣言発表、店舗閉鎖、外出自粛などから、店舗等への商品の流れが滞っており、「過剰」と判断する先が前体の73%に上るなど、在庫回転は前回調査時点に比べて急速に悪化していることが窺える。


Q. 業況判断に関する質問
 今回調査の業況判断は -1.67 と、調査開始以来の既往ボトムである2月調査(-1.28)に比べて大幅に悪化した。2月以前の推移を見ると、2018年2月に従来の既往ボトム(-0.85)をつけて以降は、1年9ヶ月に亘り厳しい水準ではあるものの、概ね -0.6 ~ -0.7のレンジで推移していたが、消費税率引き上げ後初となった前々回11月回調査に悪化、その後コロナウイルス禍の拡がりを背景に2月調査で大きく悪化、更に今回5月調査で水準がさらに低下したもの。

*業況判断DIは、「良い」2、「やや良い」1、「どちともいえない」0、「やや悪い」-1、「悪い」-2を付与して、総合計をアンケート参加者数で除して、一会員の平均を算出したもの。

 今回大きく判断が悪化した理由は、1月後半以降中国で発生した新型コロナウイルス禍の世界的な拡がり懸念が大きな要素を占めている。前回2月調査時点では、1月末の旧暦正月前後の中国での拡がりが生産面での中国からの輸入の滞りを予想させ、それに伴うサプライチェーン寸断に対する懸念から先行き不透明感を持つ先が増えていたことを反映しての結果であったが、その後、2月後半以降、コロナ禍は全世界に拡大、今に至るまで収束の目処が立っていない状況となっており、非常事態宣言発表、自宅待機、小売、外食店舗の閉鎖、各種イベント中止、インバウンド需要の急激な衰退等から景気後退感が急速に高まり、経営マインドは大幅に悪化した。
 また、前々回11月調査において、厳しい判断をされた主な理由として指摘されていた、10月に導入された消費税率の引き上げに関する点も個人消費には大きな不安定要素として持続していることも留意が必要であると思われる。

 この間、個人消費を反映する百貨店売上、チェーンストア売上高の足許の推移をみると、10月の消費税率アップの反動から売上不芳となっていたものの1月までは一定の売上規模を維持していたが、1月末に中国でコロナ禍が顕在化して以降、インバウンド客の激減、我が国での流行に伴う外出自粛の動きから、小売市場は急速に悪化することなり、4月の全国百貨店売上は、臨時閉店の影響から前年比70%ダウンを超える低水準となるなど、消費は大きくブレーキがかかることとなった。方や対照的に、食料品が主体のチェーンストア売上高は2月以降も全体としては比較的堅調な推移となっている。こうした中でも、チェーンストアでの日用雑貨売り場は底堅い売行きとなっているものの、家具インテリア関連の付加価値製品は販売が大きく悪化する展開となっている。

全国百貨店、チェーンストアにおけるタオル分野の売上高伸び率推移

前年同期比伸び率%、店舗数調整後 19/12月 20/1月 2月 3月 4月 5月
全国百貨店売上高合計 -5.0 -3.1 -12.2 -33.4 -72.8 N.A
「その他家庭用品」分野 -7.8 -8.0 -12.1 -30.7 -68.0 N.A
全国チェーンストア売上高合計 -3.3 -2.0 -1.6 0.8 -4.5 -4.5
「住関品 日用雑貨品」分野 -4.3 -0.4 8.2 2.8 -0.2 -0.2
「住関品 家具インテリア」分野 -13.5 -12.8 -10.1 -4.0 -24.9 -24.9

(注)百貨店売上高は日本百貨店協会発表、チェーンストア売上高は日本チェーンストア協会発表資料による

 一方で、3か月先の業況に関する判断DIについては、今般の不透明感の主因であるコロナウイルス禍の消費への影響も「さすがに数ヶ月単位では徐々に解決するだろう」と見方をする先もあり、先行きの判断は-1.27 と、足許の判断に比べると改善方向の結果となっている。しかし、水準自体は、前回2月調査での-1.00に比べると大きく悪化しており、景気の先行きに対する判断は極めて厳しくなってきているということは間違いない。

業況判断DI


Q.販売、仕入動向に関する質問
 今回5月調査では、「悪い」と判断する先が80%、加えて「やや悪い」と判断する先13%を入れると、全体の93%の先が悪い方向に判断している。これは前回2月調査(79%)を大きく上回る数字で販売状況が日を追うごとに悪化していることを示している。
 2月後半以降、中国ほかからのコロナウイルス罹患者の入国を妨げる措置が取られ、国境を事実上閉鎖していることから外国人の入国が極端に減少、インバウンド需要は皆絶に近い状態になっている。また、東京、大阪をはじめ全国的に非常事態宣言が出され、移動の自粛が叫ばれる中、店舗の閉鎖が行われるなど、入り込み客数の減少もさることながら、オープンしている店舗数の激減や営業時間の短縮が進んだことが、小売金額の減少に拍車をかけた。
 「巣ごもり需要」は高まり、ECによる消費も大きく進展したものの、消費全体から見ればその比率はまだまだ低く、販売状況全体は大きく停滞する結果となった。
 こうした中、マスク、除菌液などの衛生商品は爆発的な売行きを示すなど、ドラッグストアやホームセンターなどでは活況を呈する売り場も散見されるが、食料品を除く多くのアイテムは大幅に販売金額が減少。そうした中にあって、「自宅待機」者の増加、「手洗い」の奨励などを背景に実用向けのタオルは販売が相対的に堅調となっており、「多くのアイテムの中ではタオルは比較的恵まれたアイテムである」との意見もきかれるところでもある。

 前月との比較で仕入価格の変化を問う質問では、今回調査では「上昇した」と判断する先はなくなっており、93%の先では「変化なし」と回答している。また、販売価格の変化を問う質問では、80%の先で「変化なし」と回答しているなど、仕入、販売においては、今回調査では、殆ど価格の動きはなかったと判断できる。
 コロナウイルス禍のために、テレワークの推進が勧奨され、商談自体が殆ど行われていない状況で、単価的な変化も発生することはなかったことが推察される。

Q.在庫動向に関する質問
 在庫水準に関しては、2~3月はコロナウイルス禍の影響から中国などからの入荷が遅れている状況であったが、3月中にはこうした状況も解消して、入荷は順調になってきていた。一方で、3月末の非常事態宣言発表以来、街への外出が極端に抑えられ、店舗での販売が急速に不振になると、卸レベルでの滞貨が顕著になってきた。同宣言発表後は、店舗自体も閉鎖され、顧客とも連絡が取りにくい状態が進み、卸からの商品の送り込みは非常にしにくい状態となっている。
 今回調査時においては、この状況を反映し、在庫に関しては、73 %の先が「過剰」との判断をしており、前回2月調査時点の36%に比べて大幅に悪化している状態。
 足許6月以降は、徐々に店舗も再開されて荷動きも戻りつつあるが、営業時間の調整も持続しており、当面は過剰在庫が急速に改善されるという状況にはなりにくいと思われる。
以上

なお、本調査に関するご質問等がありましたら、お気軽に以下にご連絡ください。
info@osakatowel.jp

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